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[住宅建材]漆喰とは?2022年11月16日(水)

[住宅建材]

美しい風合いが醸し出す高級感ある壁材の漆喰(しっくい:Stucco)は、世界各地で古くから愛され、現在に至っても使い続けられています。昔はいつからどこでどんな用途に使われ、現在に至ってはどのような形で使われているのでしょうか?更には、使い続けられる理由やメリットは、どのようなことなのでしょうか?

本記事では、現在では主に漆喰は、住宅に使われていることが多く、一戸建て・マンションに留まらず、オフィスや学校、病院や公共機関などの室内空気に関わる方々へその歴史、原料、製造工程、特性などをご紹介します。

stucco(漆喰)

[目次]


1、しっくいとは
2、漆喰の歴史
3、漆喰の伝来
4、漆喰を使った世界の文化遺産
 -1、アルベロベッロのトゥルッリ
 -2、サントリーニ島
 -3、ピラミッド
 -4、アンベール城
 -5、万里の長城
 -6、姫路城
5、漆喰の原料
6、漆喰の生産工程
7、漆喰の特徴
8、漆喰と珪藻土の違い
 -1、安心・安全な素材
 -2、ウィルスを不活化
 -3、調湿性能
 -4、消臭効果
 -5、VOC(揮発性有機化合物)吸着
 -6、省エネ性
 -7、抗菌性
 -8、二酸化炭素を吸収
 -9、デザイン性
 -10、部屋が明るくなる
 -11、太陽光の反射
 -12、耐火性
 -13、ペットや植物にも良い環境
 -14、静電気を帯びにくい
 -15、メンテナンスが簡単
9、珪藻土と漆喰との違い
10、漆喰を選ぶ時のポイントと注意点


1、「しっくい」とは

漆喰(しっくい:Stucco)とは、主成分が水酸化カルシウム(消石灰:Ca(OH)₂)とした建築材料です。その「消石灰」にスサや海藻のりなどを加えたものが漆喰です。漆喰は、優れた調湿性能や消臭性能、VOC(揮発性有機化合物)吸着性能などがあり、漆喰を用いることで健康で快適な空間を創ることが可能です。「しっくい」の名称の由来は、石灰(せっかい)から来ています。


2、漆喰の歴史

漆喰の歴史はとても古く、日本だけではなく世界の様々な建物に使われてきました。今から5千年前、エジプトのピラミッドに使われたのが漆喰の起源と言われています。その他にもイタリアのアルベロベッロやギリシャのサントリーニ島の建物など、様々な有名な文化遺産に利用されてきました。後にヨーロッパからシルクロードを渡り、中国・朝鮮半島を経て、仏教とともに西暦550年ごろ日本にやってきました。以降、各地のお寺は漆喰の白壁になりました。そのような背景もあり、漆喰は徐々に根付き、姫路城をはじめとする多くの城郭や土蔵の壁などにも使われるようになり、日本でも伝統的な建材となっていったのです。またヨーロッパでは、今でも漆喰が多く使われており、近年では日本でも改めてその良さが見直されています。


3、漆喰の伝来

約5000年ほど前、エジプトのピラミッドに漆喰を使われたのが、漆喰の起源と言われています。後にシルクロードを経てインド、中国・朝鮮半島を経て
西暦550年ごろに仏教とともに日本に伝来し、日本各地で建立したお寺に漆喰が使われ、その壁の強さから各方面に広まっていったといわれております。


4、漆喰を使った世界の文化遺産

漆喰は、世界各地で様々な建築物に使われており、世界遺産になっているものも数多くあります。

 4-1、アルベロベッロのトゥルッリ(イタリア:ITALY)
アルベロベッロには、とんがり屋根の石屋根と白漆喰がとても美しい「トゥルッリ」と呼ばれる円錐形の家が1000軒近く並んでいる

 4-2、サントリーニ島(ギリシャ:GREECE)
サントリーニ島は、漆喰の白壁の家が密集していることで有名。またギリシャは日差しが強いので、漆喰を塗ることで建物の中が高温になるのを防いでいる。

 4-3、ピラミッド(エジプト:EGYPT)
今から5000年前からピラミッド建設に漆喰が使われていた。その用途はピラミッドを形成する石と石をくっつける接着剤として使用されている。

 4-4、アンベール城(インド:INDIA)
アンベール城には至る所にフレスコ画が描かれている。フレスコ画とは壁に「石灰」と「砂」を混ぜた漆喰を塗り乾く前に水で溶いた顔料で描く絵のこと。

 4-5、万里の長城(中国:CHINA)
中国の万里の長城には、レンガを積む漆喰が使用されていました。また、漆喰は西安の城壁などの建造物にも使用されています。

 4-6、姫路城(日本:JAPAN)
姫路城大天守は、築城から400年重ねています。またその外観の白さから別名「白鷺(しらさぎ)城」とも呼ばれています。


5、漆喰の原料

漆喰の原料は「石灰石」です。石灰石は、主に方解石(炭酸カルシウム)という鉱物から出来ている岩石で、これを鉱業資源として取り扱う場合に「石灰石」と呼びます。石灰石は、長い歳月をかけて海中のサンゴや海洋生物が堆積して地層化したものです。また、全国に200以上ある鉱山から生産される石灰石は、年間約1億4千万トンになります。石灰石の主な採掘場所は、栃木県「野州灰」、岐阜県「美濃灰」、滋賀県「近江灰」、高知県「土佐灰」、大分県「津久見灰」などから採掘されています。特に高知県産の石灰石は、中でも白土が高く耐久性もあります。


6、日本の石灰石の主な採掘場

6-1、「筑前灰」(福岡県):高い純度と品質を誇る、筑前地域の石灰石

6-2、「津久見灰」(大分県):日本一の生産量を誇る津久見地区の石灰石

6-3、「土佐灰」(高知県):高知県の厳しい気候に対応した耐久性の高い石灰石

6-4、「近江灰」(滋賀県):近江灰は、江戸時代から掘られ、利用されてきた

6-5、「美濃灰」(岐阜県):美濃灰は、江戸時代から石材や石灰石の原料として採掘されている

6-6、「野州灰」(栃木県):栃木県葛生町、栃木市にかけての石灰石は古くから石灰業が盛ん


7、漆喰の生産工程~施工・完成まで

漆喰は、自然のサイクルに従って、元の石灰石に還っていく循環型の建材です。次の工程の通り、自らの成分の力で元の姿に戻ります。

7-1、石灰の山から石灰石を発掘します

7-2、採掘した石灰石を加工しやすいように細かく粉砕します

7-3、石灰石(CaCO₃)を1000℃で加熱し、生石灰にします

7-4、生石灰(CaO)に水を加えて消化すると、消石灰(Ca(OH)₂)になります

7-5、消石灰に保水材として、海藻のりを加えます

7-6、さらに繊維状のスサを加えることで、ひび割れを防止することができます

7-7、各素材を混ぜ、漆喰が完成します

7-8、建築現場では、粉末状の漆喰に水や油などを加え、ムラが無いよう練り合わせます

7-9、左官工の手で壁にコテで漆喰を塗り、建物の表面を仕上げていきます

7-10、施工後は、空気中の二酸化炭素を吸収し、徐々に元の石灰石に戻っていきます


8、漆喰の特徴

漆喰の原料は石灰石。その石灰石を加工し、海藻のりやスサを加えたものが漆喰です。漆喰に水を加えて壁に塗り付けると、乾燥して空気中の二酸化炭素と化学反応し、再び元の石灰石と同じ成分に戻っていきます。また、漆喰が硬化する過程で空気中の二酸化炭素(CO₂)を吸収することから環境負荷にも配慮した建材でもあります。加えて、昔ながらの漆喰の特徴は非常に多く、塗った厚みに比例してその特徴の恩恵を享受できます。下記にその特徴や効果をご紹介いたします。

8-1、安心・安全な素材

漆喰の種類により含有成分は異なりますが、一般的には消石灰(水酸化カルシウム)を主成分とし、収縮防止・補強のため繊維状のスサ、保水材として海藻のりなどを加えて製造されています。また安全性をさらに明らかにするために国内基準である「JIS A1901」の試験方法に準じて、漆喰から放出される物質調査を大学と共同で行っている漆喰もあります。そのため、その漆喰は有害物質がほとんど検出されないため安全性が高いことがわかっています。
逆に、他の漆喰では有機溶剤成分が検出されているものもあります。一般的によく使われているビニールクロスは石油由来成分の検出が、珪藻土からは防腐剤成分が検出されています。

このことから自然素材だから安心であるということは云えず、漆喰を使用する際には素材の細部まで確認する必要があります。

8-2、ウィルスを不活化

株式会社無添加住宅が販売している無添加住宅オリジナル漆喰では、漆喰の表面にヒト・コロナウィルス(HCoV-229E)を付着させる試験をバイオメディカルサイエンス研究会で行った結果、そのウィルスは5分間で100%不活化(死滅)するという試験結果が出た漆喰で明らかになりました。漆喰の主成分である消石灰は、強アルカリ性でタンパク質を分解する性質がある為、ヒト・コロナウィルスと同じカテゴリとされる、エンベロープウィルスの周りを囲んでいる脂質層に含まれるタンパク質を破壊し、ウィルスを不活化させることが出来ます。
また、インフルエンザウィルス(A 香港型:H3N2)でも同じ試験結果では、無添加住宅オリジナル漆喰が抗ウィルス性を持つことが実証される結果となっています。

8-3、調湿性能

人間にとって快適な湿度は40~70%です。漆喰は微細な多孔質の素材であるため、優れた吸湿・放湿性があります。空間の湿度を適度に調節することで結露を抑え、カビ・ダニの繁殖を防ぎ、快適な室内空間を実現します。また、湿度の高い夏はジメジメした湿気を吸い込み、乾燥した冬には湿気を放出し、季節に関わらず居心地の良い室内環境を保ちます。そのような効果のある漆喰は呼吸する壁とも呼ばれています。

8-4、消臭効果

人に不快な印象を与えるトイレやゴミ、ヒトの生活臭、ペットなどの様々な臭い。消石灰が主成分で多孔質である漆喰は、こうした不快な臭いを吸着浄化する優れた機能があります。高齢者住宅やペットを飼っている方、人が集まりやすい施設:病院や公共施設等にもお勧めの機能性建材です。

8-5、VOC(揮発性有機化合物)吸着

漆喰は、有害な化学物質を排出しないだけではなく、シックハウス症候群の原因となるトルエンやキシレンなどの有害な化学物質を吸着し分解します。それは多孔質である漆喰に物質が吸着し、漆喰の強アルカリ性による酸化還元作用によって空気中のトルエンやキシレンなどの化学物質を分解します。

8-6、省エネ性

実建物の夏季冷房、冬季暖房実験で一般的なビニールクロス内容仕様の居室よりも漆喰内装仕様の居室の方が、エアコンの電力総量を約16%減少することがわかりました。これは漆喰の室内調湿効果により外部の温度の影響を受けづらく、エアコンの急激な温度調整が少ないことで電力削減につながっています。

8-7、抗菌性

漆喰は強アルカリ性のため、有機物分解する殺菌機能があります。その主成分である消石灰の作用により、細菌の育成・増殖を抑制し、安心して生活することが出来ます。また、菌でも有用な菌(麹菌など)を生かす作用もあり、その知恵は昔から、酒造、味噌の麹造場の室内などに使用され、発酵に良くない有害菌の繁殖を抑制してきました。

8-8、二酸化炭素を吸収

漆喰は、空気中の二酸化炭素を吸収し、長期的に固まり続けます。主成分である消石灰は、空気中の二酸化炭素を吸収し続け、石灰石に戻ります。これを炭酸化反応といいます。消石灰は短期的に一気に炭酸化されるのではなく、長い時間をかけれ徐々に炭酸化し、石灰石に戻ります。建材としては劣化せず、逆に、より近づいていこうとする性質があります。

8-9、デザイン性

漆喰壁はどんな住まいにもマッチする仕上がりと、サイディングやビニールクロスなどの新建材では表現できない自然素材の建材ならではの独特なデザイン性があります。漆喰を塗る左官職人が行う丁寧な手仕事ならではの微妙な陰影や温かみが上質な雰囲気を醸し出し、空間に味わいが生まれます。そのような漆喰壁は時間経っても劣化することは無く、いつまでも飽きのこない外観デザインや内装インテリアを演出し続けます。また様々なテクスチャーバリエーションもあり、ベンガラなどで着色も可能です。

8-10、部屋が明るくなる

漆喰は施工後、空気中の二酸化炭素と反応し、元の石灰石に戻っていきます。その石灰石の中に方解石という結晶があり、その方解石を含んだ漆喰は光に対する反射率(70~85%)が極めて高いため、室内の部屋を明るくさせます。そのような性能を取り入れることで、漆喰面に光が反射するように窓や照明器具を設置することで省エネにも繋がります。

8-11、太陽光の反射

漆喰の中にある方解石が、太陽光の熱源である赤外線を乱反射させるため、外壁に熱が溜まりません。上記の写真はサーモグラフィーで建物を計測したもので、漆喰壁の温度は低く、サッシの部分は温度が高く赤色で表示されています。また、サイディング壁と漆喰壁の表面温度も比較計測し、同じ白壁でも17℃の温度差があることがわかりました。

8-12、耐火性

漆喰の主成分である消石灰は無機物であり、不燃性の物質ですので、燃えにくく防火機能に優れています。そのため、化学建材のようにダイオキシンなどの有害ガスが発生することもありません。昔の城や蔵が漆喰で塗られていたのも、漆喰が火に強いからなのです。

8-13、ペットや植物にも良い環境

室内環境に敏感なペットは植物たちは、空気がきれいな中では元気よく育ちます。ペットは室内空気の影響を人間以上に受けています。それは犬や猫などは身体が小さく、化学物質の代謝解毒能力は人間よりもかなり劣っているためです。

8-14、静電気を帯びにくい

昔ながらの伝統的な漆喰には化学接着剤など余計なものが入っていないので、静電気を起こしません。壁紙などは基本的に静帯電を帯びるので、ほこりや花粉などが壁に付着し、黒く汚れる原因になります。一方、静電気を起こさない漆喰は、長期的に白く保つことが出来ます。また上記の写真のように静電気防止効果でたばこのヤニ汚れも壁紙に比べて付きにくい魅力もあります。

8-15、メンテナンスが簡単

ちょっとした汚れであれば、消しゴムで落とすか、カッターで削って汚れを消します。多少の割れが発生した場合は、補修用漆喰を刷毛で塗れば元通りになります。これらは住まい手の方ご自身でお手入れすることが可能です。また壁紙ははじめは綺麗ですが、一旦汚れるとお手入れしたところで新しく貼り替えない限りみじめさは拭いきれません。その点、漆喰は年数を重ねるごとにさらに深みが増していきます。


9、珪藻土と漆喰との違い

珪藻土と漆喰の使用用途や特徴は非常に似ていますが、大きく異なるためその特徴をきちんと理解する必要があります。珪藻土は藻類(珪藻:プランクトン)の死骸が海底や湖底に長年にわたって堆積して出来た粘土状の泥土で、古くから七輪や耐火煉瓦の原料、酒やビールの濾過材、吸着や脱臭剤などに幅広く利用されています。漆喰は、それ自体が自らのサイクルで固まる性質や抗菌性を持っているのに対し、珪藻土にはその性質が無く、仕上げ材に使用するためには、固化剤(接着剤)や防カビ剤などの補助剤が必要となります。そのため、そこで問題になってくるのが、その効果や寿命、安全性です。固化材が揮発して劣化すれば、珪藻土はバラバラになってしまう可能性があり、また防カビ剤などの配合物質がシックハウス症候群の原因になる可能性もあります。珪藻土を壁材として使用する場合は、この点に注意する必要があります。


10、漆喰を選ぶ時のポイントと注意点

漆喰は、世界各地、日本のあらゆる場所で採掘した石灰石を原料として、その地域で取れた材料などを混ぜ込み各メーカーが漆喰として販売しております。そのため、現在料に何が使われているのか?どのような特性があるのか?接着剤などの固化材や化学物質が含まれていないのか?などを確認して選んでください。
繰り返しになりますが、漆喰は石灰石本来の特性で、自らの力で二酸化炭素と化学反応を起こして固まります。そのため、身体にあまり良くない有機溶剤や添加物などを入れる必要はありません。すべて天然のものだけで事足りるのです。
ですが、塗りやすさの向上や割れにくさを追求するあまり、上記のような不要な物質が入っていることも多く、天然のものだけでつくられている漆喰も数少ないのが事実です。しっかりと自分が納得できるものを選んで、漆喰本来の特性を感じられるものをお選びいただくことをお勧め致します。


以上、「漆喰の漆喰の特性と押さえておきたい基礎知識」編でした。
最後までご視聴いただき、ありがとうございました。

書いた人

無添加住宅正規代理店
株式会社トミス建設(屋号:自然素材ハウス)