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どっちがいいの?「珪藻土」と「漆喰」2023年2月18日(土)

[住宅建材]

漆喰壁

最近では、ガン患者の急増やコロナウィルス蔓延などの影響や、健康寿命、予防医学の考えも広がり、健康志向の方が非常に増えていますね。

「健康」という言葉には、食品、水、衣服、運動、睡眠、化粧品などなど、様々な分野にわたっておりますが、今や住宅分野でも、使っている建材によって「健康」に影響すると、拘りをもった家づくりをする方が増えてきています。
今回はその中でも、住宅内部の面積で一番大きな割合を占める「壁・天井」にフォーカスし、その中でも自然素材・健康素材と言われる壁建材に特化してお話いたします。

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【目次】
1)壁材の種類と人気の建材
2)塗り壁材「珪藻土」「漆喰」の人気の理由と、その違い
 (1)「珪藻土」とは、
   ①珪藻土の産地
   ②珪藻土の歴史 
   ③珪藻土の特徴
 (2)「漆喰」とは、
   ①漆喰の産地
   ②漆喰の歴史 
   ③漆喰の特徴
    Ⓐ調湿効果
    Ⓑ消臭効果
    Ⓒ抗菌効果
    ⒹVOC吸着効果
    Ⓔ省エネ効果
    Ⓕウィルス不活化効果
    Ⓖ耐火性能
    Ⓗ静電気を帯びにくい
    Ⓘ反射率が鏡とほぼ同じで明るい
    Ⓙメンテナンスが簡単
 (3)珪藻土と漆喰のちがい
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1)壁材の種類と人気の建材
 住宅の室内の壁・天井などに使う壁材には「クロス」、「木材」、「タイル」、「石」、「塗り壁」等がありますが、健康志向の方には、機能性の高い「珪藻土(けいそうど)」や、「漆喰(しっくい)」の「塗り壁」材が大人気です。
新築だけに留まらず、中古住宅のリフォームを行う際にも、選ばれるようになりました。

2)塗り壁材「珪藻土」「漆喰」の人気の理由と、その違い
 塗り壁材は、デザイン性はもちろんのこと、機能的側面が強いことが大きな特徴です。
共通している内容では、調湿効果、消臭効果、抗菌・抗ウィルス性能、防火性能等があります。
この二つは、非常に似ておりますが、根本的な違いがあります。
それは、自らの性質で固まるか固まらないかです。
次項以降で、詳細についてお伝えいたします。

(1)珪藻土とは、
珪藻土
「珪藻土」は、「珪藻」という海中の植物性プランクトンの死骸が堆積し、長い期間を経て化石化した石です。
珪藻の主成分は、二酸化珪素(Sio2)で、ガラスと同じです。珪藻土の産地は日本では80か所位あり、秋田・石川・岡山・大分・北海道・鹿児島が有名です。
産出場所は、地層の上層部、下層部まで幅広く、弱酸性から強アルカリ性まであり、用途や機能性も異なります。

①珪藻土の産地
現在、工業的に利用できる純度・鉱量を産出できる大規模に採掘されている珪藻土の鉱床は限られており、アメリカ、メキシコ、チリ、アイスランド、フランス、スペイン、中国、日本となります。
日本では、北海道、秋田県、石川県、岡山県、大分県、鹿児島県で、採掘が行われていますが、堆積年数の長短、堆積中の地殻変動の影響の有無、優占種の形状などにより製品化すると品質や特徴が異なるようです。

②珪藻土の歴史
地球上では、約2,000年前のギリシャで水に浮く軽量レンガとして建築物に使われていた記録があります。
現在確認されている最古の建築物では、トルコのイスタンブールにあるビザンティン式建築の「ハギア・ソフィア大聖堂」のようです。
ハギア・ソフィア大聖堂
日本では、江戸時代の石川県でかまどや炉の材料として使われ始めたようで、その技術を元に一般家庭でも釜戸として普及していったようです。
明治維新後には少しづつ工業製品が出てきましたが、技術レベルが低かったため、海外からの技術(特にアメリカ)に頼っていたそうです。
大きな特徴として濾過性能が高かったため、砂糖の精製に使われ始めます。
それが他の鉱物資源の精製に応用され、医療業界でもその技術を使い発展していきました。
近年では、家庭用コンロの普及で使用用途が減少したため、それに取って代わる用途として1990年位から住宅建材として使われ始めました。
上記のように珪藻土自体の歴史は長いですが、住宅建材としての歴史は浅いと云えます。
珪藻土釜戸

(参考サイト https://www.e-keisoudo.com/about.html )

③珪藻土の特徴
珪藻土マット
住宅内壁建材に使用の際には、珪藻土そのものには接着能力はないので、アクリル系接着剤が必要となります。最近では自然素材の接着剤利用の製品も出てきたようです。
珪藻土自体には発がん性はありませんが、調湿機能が高い為、その性質を生かした工業用製品にアスベストを混ぜて人体への危険性が話題になりました。
珪藻土の含有率の低い粗悪品も流通しているので、内容をよく確かめてから購入・利用をすることをお勧めします。

(参考サイト https://ja.wikipedia.org/wiki/珪藻土#珪藻土の利用 )

(2)「漆喰」とは、
漆喰
もともとは石灰岩で、それをボロボロに砕き、焼いてから水を加え、建材用につなぎなどを入れたものです。
壁に塗ると、二酸化炭素と反応して自らの力で固まります。固まると石灰岩に戻るので、通常であれば形状・効果は持続的に効果が期待できます。
消石灰(水酸化カルシウム)を主成分としており、特徴として強アルカリ性(PH値:12以上)のため、ウィルスや菌が付着すると生きていられません。
鳥インフルエンザが流行った際には、その性質を生かして白い防護服を着た方が白い粉を巻いてウィルスを死滅させています。
他、代表的な効果として、調湿効果、消臭効果、抗ウィルス効果、防火性能、VOC吸着性能、省エネ効果、メンテナンス性能、持続性等があります。
反射率も高い為、外壁に使用すれば夏場の暑い時期でも外壁は体温以下の温度となるため、室内は快適です。
遠赤外線を出す断熱器を使用すれば、漆喰が方解石の集まりで光や熱を乱反射させるので、明るく、温かい空間になります。

(※参考サイト https://www.mutenkahouse.co.jp/products/plaster )

①漆喰の産地
石灰山
漆喰は、原料が石灰石なので、世界各地で産出されています。
ヨーロッパでは、スイス漆喰、イタリア漆喰、フランス漆喰、スペイン漆喰など産地よって色味が異なりますが、主に、巨大建造物を造る際に石と石をつなぎ合わせる用途として使われ始めました。
日本では、栃木県「野州灰」、岐阜県「美濃灰」、滋賀県「近江灰」、高知県「土佐灰」、福岡県「筑前灰」、大分県「津久見灰」など、全国各地で採掘されています。

(参考サイト https://sikkui.net/world/ )
(出典 石灰石鉱業協会)

②漆喰の歴史 
ピラミッド
漆喰は、5000年以上の歴史があります。エジプトのピラミッドの棺の内壁に使われたのが最古と言われています。
エジプト、古代ローマ周辺が起源のようで、地中海を取り巻く周辺のギリシャ、ローマの建物やフレスコ絵画にも使用され、シルクロードを渡ってアジアに伝来されました。
インドのアンベール城、中国の万里の長城にも使われています。
その後海を渡って日本にも伝来し、日本では1300年前の、奈良時代、平安時代から使われており、江戸時代には大火事から守る防火材として普及しています。
セメントの歴史は150年位なので、漆喰は、当時高級建材として特定の建物に使用されていました。
代表的な建物では姫路城ですが、神社・仏閣・蔵でよく見かけますね。

③漆喰の特徴
漆喰のサイクル
漆喰の大元は石灰岩(CaCO3)です。上記の工程で見ると、まずは石灰岩を小石状にしてから焼成すると生石灰(CaO)になります。
それに水を加えると皆さんがよく知る消石灰(Ca(OH)2)になります。
この消石灰は、強アルカリ性(PH値:12以上)という特徴があるため、酸性の畑をアルカリ性にしたり、菌を死滅させることに使用したりします。
数年前に宮崎県で起こった鳥インフルエンザの際にも、白い防護服を着た方々が白い粉をまいていたものは消石灰です。
鳥小屋全体にまくことによってウィルスや菌を無くす効果があります。(※下記記事・写真参照)
鳥インフルエンザ記事漆喰鳥インフルエンザ
Ⓐ調湿効果
Ⓑ消臭効果
Ⓒ抗菌効果
ⒹVOC吸着効果
Ⓔ省エネ効果
Ⓕウィルス不活化効果
Ⓖ耐火性能
Ⓗ静電気を帯びにくい
Ⓘ反射率が鏡とほぼ同じで明るい
Ⓙメンテナンスが簡単
他、まだまだたくさんあります。
このように自らの素材の力で固まり、機能的な性能を持ち合わせています。
ビニールクロスとの比較では、材料費と施工費はかかりますが、中長期のメンテナンスが不要なことと機能的な付加価値を考えるとコストパフォーマンスは高いのではと思います。

(参考サイト https://www.mutenkahouse.co.jp/products/plaster )

(3)珪藻土と漆喰のちがい
ここで、下記の表をご覧ください。
珪藻土と漆喰の違い
「珪藻土」と「漆喰」の違いを表にまとめてみました。
どちらも自然素材であることは間違いないのですが、そのもの自体が固まる固まらないことで余計な成分・手間・費用がかかることが比較で分かります。
結果として、性質・性能の違いとなって表れています。
非常に面白いですね。

住宅建材での性能はそれぞれ異なりますが、こちらには書いていない特徴や性能など、まだまだたくさんありますので、詳細内容を確認してから住宅建材として使われることをお勧め致します。

書いた人
株式会社トミス建設