化学物質過敏症ってなに?2023年3月17日(金)
[シックハウス]
最近、私の知人が「化学物質過敏症」を患ったという話を聞きました。
その知人は、気軽に病院にも行くことが出来ず、先日まで非常に寒い状況下でも、ダウンジャケットや毛布にくるまりながら家の窓を全開にして過ごしているようです。
私は、知覚過敏と似たようなものなのか?と、さほど大きな問題ではないのかな?と思っていましたが、ネットで調べてみるととんでもない!!!
私たちが日常的に使用している洗剤、香水、柔軟剤、芳香剤、防虫剤、整髪料などに含まれる化学物質に触れると倦怠感、吐き気、呼吸困難や頭痛などの症状が出る疾患のようです。
私自身はそのような症状は気にしたことが無いくらい無関心でした。
今回は、この「化学物質過敏症」(Chemical Sensitivity)についてお話したいと思います。
現在、この化学物質過敏症を患っている日本の人口は、2005年時点で約100万人を超えており、今現在も増えていっているようです。
その背景について調べてみました。
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【目次】
1)化学物質過敏症の歴史
2)空気の摂取について
3)高性能建材の普及とその影響
4)室内の空気環境をよくするためには?
5)自然素材という選択
6)自然素材がすべて良いとは限らない
7)まとめ
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1)化学物質過敏症の歴史
「化学物質過敏症」という概念が出始めた時期は、1987年のようですが、時代ははるか遡り、戦後の高度経済成長が関わっているようです。
戦後の日本を代表する東京では、大空襲の影響もあり、住む家もなく、衣服もボロボロの状態で、食べ物もあまりない時代でした。
そんな状況下でも日本人は経済復興を目指して、住宅を速く、たくさん、安く造る必要がありました。
そこで大きな影響を及ぼしたのが新建材と呼ばれるビニール製品や合板です。今までは家一棟を建てるのに多くの建材や大工が必要で、工期も長くかかっていましたが、新建材の台頭で少ない人手と労力、安価な費用で住宅が建てれるようになり、それに比例して経済も成長していきました。
そこで使われていたビニール製品の正体は、石油を原料とした溶剤です。
その当時はまだ住宅の気密性が低かったため、雨は凌げるものの、冬は寒いのが当たり前という状態です。
結果として、自然換気が出来ていたことや、石油製品の使用が少なかったが為、シックハウスや化学物質過敏症という概念自体も存在しませんでした。
時は過ぎ、1980年(昭和55年)に建築基準法の改正に伴い省エネルギー基準を設け、断熱性能も高まっていきます。
暖かい家が求められ、ビニール製品から揮発する化学物質が充満する家が次第に増えるようになったのです。
更には、住宅断熱性能をさらに高めようと1991年(平成4年基準)には、新たな断熱・気密性能を高めたのです。
その結果、室内空気環境は悪化し、次第に健康被害の相談件数が徐々に増えていきます。
その時、日本には「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」などといった概念自体一般の方々にはほぼ知られていない状態です。
その頃から家にいると吐き気、呼吸困難、頭痛等、症状は人それぞれ違えども健康被害が出てきます。
1990年代後半にシックハウスという概念が認知され、国は2003年にようやく建築基準法改正の際に揮発性有機化合物(VOC=Volatile Organic Compounds)の「ホルムアルデヒド」が人体には良くないとし、建材製造の際に使用制限をかけるという対策を取りました。
他12物質についても指針値を定めています。
今現在も2003年に制定した物質のみ気を付けるようにとされています(数値の改定は、現在まで数回あり)が、あくまでも指針値を定めているだけで、基準値を超過しても罰則はありません。
※規制物質は、13物質のうち2種類(ホルムアルデヒド、クロロピリホス)のみ
2)空気の摂取について
ヒトが日常の食事を1日に摂取する量は、だいたい成人で2㎏/日です。それに対し、空気はどれくらいなのでしょうか?
答えは、20㎏/日です。なんと、食事の10倍もの量を摂取しているんですね。
※参考サイト https://www.daikin.co.jp/school/class04/lesson01
ご飯の量でいうと、なんとこれまたなんと100杯分にもなるんです。
それを毎日まいにち、生まれてから死ぬまで摂取するんですよね。すごい事ですよね。
しかも、室内の空気は色がついていません。つまり、空気の質は、臭いでしか気づけないんです。
知らずしらずのうち、こんなにも多くの空気を摂取していることを考えると、きれいではない空気を吸うことは、身体に良くないことは言うまでもありません。
ヒトが一日の中で、室内で過ごす時間は、なんと21時間/日なんだそうです。
※参考サイト https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/63/511/63_KJ00004222729/_pdf/-char/ja
ということは、室内の空気環境はとても大事ということが分かると思います。
健康に留意している方の中には、オーガニック食品やミネラルウォーターを選んで摂取している方も増えてきていますが、食事や飲み物を選ぶことは出来ても空気を選ぶことはできません。
それだけ大事なものなので、室内の空気環境は、気を付けたいものですね
3)高性能建材の普及とその影響
これまで、日本の住宅建材メーカーは、日本の住宅を機能的に良くしようと建材を日々の研究を行い進化させてきました。結果、国が求める気密性能や断熱性能もとても良くなり、冬の快適性は数十年前に比べると雲泥の差になりました。その立役者は、大半が石油製品です。住宅内の隙間を少なくすことで気密性能を上げ、更には性能の高い断熱材を壁・床・天井に施し、外気の寒さの影響をものともしない環境を築いています。
しかしながら、1章でも話している通り、石油由来の製品はその物質から揮発性有機化合物(VOC)を出し続けます。住宅性能が高まれば高まるほど、換気をしなければ、その室内の空気を汚し続けてしまうのです。
このような背景があり、2003年の建築基準法の改正で居室に換気システムの設置義務を課したのです。つまり、室内の汚れた空気を換気によってきれいな外気を取り込み、安全性を担保しようという考えです。
本当にこれで良いのでしょうか?
せっかく、気密性能を高めて室内の温熱環境を高めることが出来るようになったのに、一度暖めた空気を2時間に1回外気と全交換しなくてはならない規制を国は施行しています。矛盾していると思いませんか?
4)室内の空気環境をよくするためには?
室内の気密化は、いわばビニール袋を家の大外に被せているようなものです。当然、その内部で生活をすれば空気は汚れます。そのため換気も必要です。
では、快適性を高めたまま、室内空気環境をきれいに保つためにはどうすれば良いのでしょうか?
一つ目は、電化製品を使って強制的に空気をきれいにする。
二つ目は、定期的にきれいな外気を取り入れ換気を行う。
三つ目は、空気が汚れないような建材を使って室内をつくる。
上記から、いづれか一つを選ばないといけないのです。
私は、三つ目がいいですね。
最初から揮発性有機化合物(VOC)が出ない建材を使えば、過度の換気を行う必要はありませんから。みなさまはどれが良いですか?
5)自然素材という選択
住宅建材には、石油由来の製品と自然素材の製品と大きく2つに大別されます。
私は、自然素材の製品を選びたいと思っています。その中には、色々なものがありますよね。
屋根、壁、床、窓、ドア、住宅設備、断熱材、構造材、などなど。
他にもたくさんの場所に建材が必要です。
屋根には、表面に天然石、内部には断熱材、壁には、珪藻土や漆喰を使い、床には、無垢フローリング材、窓は木製サッシ、ドアは無垢のドアを採用、キッチンや洗面にもホーローや石天板を採用、化粧内部の断熱材にはウッドファイバーやパーフェクトバリア、構造材には、杉、ヒノキなどの針葉樹を薬剤処理をせず低温乾燥した木材を使います。
6)自然素材がすべて良いとは限らない。
しかしながら、天然素材の中にも建材として成形するために有機溶剤を使った製も存在します。
製品の特性をしっかり理解したうえで活用しなければ、室内空気環境をきれいに保つことが難しいので要注意です。
例えば、珪藻土は珪藻という植物のプランクトンの死骸が堆積して出来た土です。
それをボロボロに砕き、有機物であるが為防腐剤や成形するための接着剤が必要不可欠です。
フローリングにおいては、無垢材でも寸法の狂いを恐れ、表面にウレタン塗装を行ったり、防虫対策として薬剤注入しているものもあります。
当然、そのような自然素材は目的を満たすことはできません。
他にも同様な問題がある自然素材もたくさんありますので、建材の選定にはプロに聞くのが最良かと思います。
7)まとめ
・シックハウス、化学物質過敏症という概念が出てきたのは1990年代
・2003年にようやく国が建築基準法改正でホルムアルデヒドの規制や24時間換気システムの設置の義務化を課した
・ヒトは、食事は1日に2㎏摂取するが、空気は10倍の20㎏摂取する
・ヒトが室内で過ごす時間は、なんと21時間/日
・ヒトは生きている以上、空気は必要不可欠で選ぶことは出来ない
・住宅性能が高まれば高まるほど、換気をしなければ、その室内の空気を汚し続けてしまう
・一度暖めた空気を2時間に1回外気と全交換しなくてはならない規制を国は施行している
・揮発性有機化合物(VOC)が出ない建材を使えば、過度の換気を行う必要はない
・自然素材がすべて良いとは限らない
空気は、日常生活を過ごすうえで欠かすことの出来ないものです。
それをきれいなものにするのも、汚れたものにするのも目には見えない為、そこの建材にはこだわりたいものです。
このブログを書いた人
株式会社トミス建設